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2005年 04月 05日
(『隠し剣孤影抄』 文春文庫)
この一編はどちらかというと、剣よりも 病死した兄の妻とはからずも深い仲になってしまった義弟の 抜き差しならない破滅への道が印象に残る。 曽根炫次郎には婚約者がいた。 しかし兄嫁卯女との関係が続いて、なかなか踏ん切りがつかないでいる。 そんな悩みを道場仲間で、親友の石丸兵馬に相談もしている。 しかしその事実を知った、婚約者の兄は炫次郎をしかるべき筋に訴えるという。 二人は刀を抜いて向かい合い、炫次郎は婚約者の兄を斬って出奔する。 藩はその討手に炫次郎の親友石丸兵馬を指名した。 兵馬は道場の師範にそのことを言うと、炫次郎が使う秘剣は「芦刈り」といい、 相手の剣をその根元からことごとく鍔元から折るというもので、不敗の剣だが、 それを破る方法もあると兵馬にヒントを授ける。 師範は子飼いの二人を闘わせることに深い悲しみをもつのだった。 二人は村はずれで闘った。 兵馬は少しずつ、足を送って前に出た。 炫次郎はじっと立っていたが、兵馬が間合いを詰めると、 少しさがって足を踏みしめた。 はじめから、一分の隙もない、青眼の構えのままだった。 呼吸が合致し、二人は同時に踏みこんでいた。 また耳ざわりな音がひびいて、兵馬の刀は二つに折れた。 兵馬の丸い身体が、おどり上がるように動いたのは、その瞬間だった。 剣を折らせると同時に兵馬はさきに鯉口を切っていた小刀を抜いて、 必殺の一撃を炫次郎の頸に叩きつけていたのである。 (本文より引用) 炫次郎が斬られたことを知った卯女はその夜自害した。 二人の坂道を転がり落ちるような必然の死に至る不幸を 簡潔な文章で描写するというのが藤沢文学の大きな特色ではないかと思う。 それは次の「宿命剣鬼走り」でも同じことだ。
by origane1
| 2005-04-05 18:09
| 悲運剣芦刈り
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