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2005年 04月 12日
(『日暮れ竹河岸』)
畳表問屋、伊原屋の女房おうのは奉公人たちから陰で「ウチの天女さま」と呼ばれている。 「やや丸顔のふっくらした頬や童女のように澄む眼」に周りの人は気持ちをうばわれる。 亭主には囲ってから四年になる妾がいた。夫婦には子どもはいなかった。 その亭主が取引先からもらってきたという朝顔の種子を茶箪笥のひき出しにしまったままであったことをおうのは思い出し、種子を水に漬けたあと蒔いた。 ざっと数十の朝顔の花がひらいていた。 出入りの植木職人に竹垣をつくってもらたので、 朝顔は勢いよく垣を這いのぼり、見上げるような高いところにも、 花は咲きみだれていた。 (本文より引用) おうのは朝顔の世話に夢中だった。 ところが、奉公人がふともらしたことばから、その朝顔の種子は 妾のところで咲いていた朝顔から採取したものだとわかった。 おうのは花を見た。 よく見れば、朝顔は毒毒しい精気に溢れた花のようでもあった。 おうのは手をのばして朝顔の花を摘み捨てた。 無表情につぎつぎと花をむしり、つぼみも摘んで捨てた。 ひとつも残さず花をちぎり捨てると、おうのはゆっくりと家の方にもどった。 (本文より引用) いつも「おっとりとして微笑みを返す天女のような」おうのが嫉妬に狂う女に変身していた。 #
by origane1
| 2005-04-12 17:36
| 朝顔
2005年 04月 11日
(『日暮れ竹河岸』
おちかは場末の「宝莱屋」の女郎だ。 経師職人の清吉はおちかに入れあげていたせいで金がなくってきた。 おちかはそんな男には興味がない。ていよくもう来ないように諭す。 あきらめきれない清吉はその後も2,3度きたがおちかは会おうとしなかった。 ーーまた小金を持ったひとをさがさなくきゃ。 (本文より引用) 廊下でおとよが捕まえてきた松次郎とすれ違う。 「あら、こんばんは、若旦那」 おちかは艶っぽい声で言うと、松次郎の眼をたぐり寄せたまま、 全身でしなをつくった。 (本文より引用) おとよはひとの大事なお客に、色眼を使うなと怒るが、「勝手だろ」とうそぶく。 ふと松次郎が霧雨のなかを傘もささずに歩いているところを見かける。 おとよは傘をもって松次郎を追いかけ、すばやく傘をさしだし、体を寄せる。 もう半分手に入ったようなものだ、とおちかは思った。 (本文より引用) めずらしくやり手の女を描く。 #
by origane1
| 2005-04-11 19:53
| 梅雨の傘
2005年 04月 10日
(『三屋清左衛門残日録』 文春文庫)
食の風景 『残日録』には庄内の食がたくさん出てくる。 たとえば、疎遠になっていた昔の道場仲間、大塚平八と「涌井」で飲む。 おかみのみさが海からあがってきたばかりの蟹があるという。 たぶんヒラツメガニなんだろうが、それを「みそ汁」にしてほしいと清左衛門がいう。 そのときいっしょに「焼いたカレイ」と「風呂吹き大根」がだされる。(平八の汗) 清左衛門が風邪をひいて寝込む。嫁の里江が自分の手で「蕪の酢の物」 「小茄子の浅漬け」「金頭のみそ汁」などを作って清左衛門に食べさせる。 その心遣いからか、風邪も抜けていく。 (草いきれ) やはり昔の道場仲間で勘定奉行にまでなった小沼総兵衛に合う。 かれは息子夫婦の世話になるのがいやで、別宅に妾をかこっている。 その妾のために青物屋で「真桑瓜」を二つ買ってご機嫌をとろうそする。 清左衛門は老いることにあがく彼の姿に自分を重ねて悪酔いする。 (草いきれ) 清左衛門はまだ現役の町奉行佐伯熊太とは「涌井」でよく飲む。 初冬のころ、涌井で「赤蕪の漬け物」がでる。佐伯はこれに目がなく、 清左衛門が手を付けていない漬け物をもらったりする。 その席に登場したのはほかに「クチボソ」(真ガレイ)の焼いたものがある。 この時期、ハタハタがそろそろじゃないかと佐伯がいうと、 「大黒様のお年夜」(12/9)のころだから、もうすこし後だと涌井のおかみがいう。 (霧の夜) あるとき、また佐伯と涌井で飲む。 膳にのって出たのは子鯛の塩焼き、豆腐のあんかけ、山菜のこごみの味噌和え、 賽の目に切った生揚げを一緒に煮た筍の味噌汁、山ごぼうの味噌漬けなどである。 (立会人) 清左衛門は佐伯というよき友を得て、良き酒を飲む。二人の至福の時である。 ハタハタの湯上げ、ハタハタの卵のぶりこも二人の前に出て、「今夜の酒はうまい」 と言わしめる。 (早春の光) 海坂藩の食事にはとにかく味噌汁が多くでる。味噌和えも多い #
by origane1
| 2005-04-10 17:31
| 三屋清左衛門残日録
2005年 04月 10日
(『日暮れ竹河岸』・文春文庫)
十二歳から水茶屋で働いているおきち。悪ぶっている。 町内の年下のガキたちに盗みをさせて、それを売って、ガキたちと一緒に遊ぶ 費用にしている。 少年たちもおきちの関心を得るために、あちこちで小さな盗みを競っている。 ある日、盗んだ簪を持っていたら、それを作った若い職人風の男に見つかり、説教される。 男にそんなに欲しかったら一本作ってやるよと言われ、半月後に訪ねるが、もういなかった。 この男に会ってから、おきちの心境は変わった。 もう年下のガキには興味がなくなった。 おきちは彼らより一足先に巣立っていったのだ。 夕日をあびて、飛び回っているつばめがそんなおきちの心の変化を象徴していた。 似たような体験はたくさんあったような気がする。 #
by origane1
| 2005-04-10 16:23
| つばめ
2005年 04月 09日
(『日暮れ竹河岸』 新潮文庫)
老舗の糸問屋の娘おさとには親が決めた縁談が進んでいる。 嫁入り前に、いちど幼なじみのきくえに会いたかった。 きくえは下駄職人の男と突如駆け落ちし、いまでは許されて小さな店を与えられ、 子供も出来た。 三年ぶりにあったきくえはすっかり職人の女房になっていた。 親が決めてくれた人と一緒になるのがいいよ、と忠告してくれた。 その言葉とは裏腹に、きくえが今の暮らしに満ち足りていることはわかった。 おさとはきくえがなんだか羨ましかった。 それは縁談の相手が好きになれないからかもしれなかった。 親の言うなりの結婚に対する不満もある。 きくえの家からの帰り道,橋の上で男たちにからまれた。その急を救ってくれた商人風 の男に言われて河岸の一軒の水茶屋に連れていかれた。 そこで下駄の緒をすげ換えてもらい、けがの手当をしてもらった。 ただ、それだけのことだった。すこし物足りなかった。 暗くなって来たが、家に帰りたくない気分だった。 おさとは親の言うとおりにはならいぞ、と思うのだった。 たまらなく好きな短編ですね。 #
by origane1
| 2005-04-09 19:47
| おぼろ月
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