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2005年 04月 13日
(『日暮れ竹河岸』)
おせいは別れた亭主のことが気になって、こっそりと長屋を見に来た。 隣の女房が、もう引っ越したという。深川の先の入舟町と教えてくれた。 小料理屋に出ていたおせいは、三年前にそこに来る男とできてしまい、 そのことが亭主に知られ、家を捨てた。 男はやくざ者だった。おせいの身体と金をしゃぶりつくすと去っていった。 三月しかもたなかった。 別れた亭主が引っ越していった先をさがした。 町は油のように濃い西日に照らされて、日暮れが間近いことを思わせるが、 暑さの方はいっこうに衰えなかった。 風のない路面から立ちのぼる熱気がわっと顔を包み、猛猛しい日差しが 背に突き刺さって来る。炎天の下の、気が遠くなるほど長い道を歩いて来て、 おせいは全身汗にまみれていたが、目指す町にたどりついて、伊作の家を さがし回っているうちに、また新しい汗が噴き出した。 (本文より引用) 伊作の家が見つかった。自分の家を持っていた。 すだれの隅から家の中をのぞいた。 若い女が、ほろ蚊帳の中の赤子に添い寝しながら乳をのませていた。 (本文より引用) おせいは人混みの中を追われるような気持ちで歩いた。 「後悔しちゃいけないよ」と自分に言い聞かせた。 おせいのこころを投影した、晩夏のけだるい空気の描写はやはりすごいな~。
by origane1
| 2005-04-13 20:12
| 晩夏の光
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